感染症内科このページを印刷する - 感染症内科

診療科の特徴


感染症内科では慢性疾患であるHIV感染患者さんの抱える課題や問題点を明らかにして、患者さんが長期にわたり安心して医療享受できるよう活動しています。


福山医療センターは政策医療であるHIV感染者の治療において、広島県東部地区を一手に担っておりますエイズ治療拠点病院です(1994年7月に広島県より指定)。エイズ治療拠点病院においては様々なHIV感染症/エイズ症例に対応可能な、総合的で高度な医療を提供することが求められるとともに、HIV/エイズ診療に関しては日進月歩で治療・診療内容が進歩しているため、それらの情報の収集および地域の医療機関への情報提供・教育を行なうことも役割の一つとされています。
近年、抗HIV療法は治療効果が高いだけでなく、副作用もほとんどない薬剤が開発され、患者さんの服薬の負担軽減を目指した治療が主体となっています。次々と新規の抗HIV薬が登場することから、その治療ガイドラインは毎年改定され、より良い治療法の提供が求められるため、それらの情報の収集が欠かせません。そのために本院では国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター、大阪医療センター、中国・四国ブロック治療拠点病院である広島大学病院、岡山県の中核治療拠点病院である川崎医科大学病院などからHIV/エイズに造詣の深い外来講師を招聘して講演会を開催しています。さらにHIV診療チームの各スタッフはHIV/エイズ関連の学会(日本エイズ学会、日本感染症学会など)・研究会・研修会に積極的に参加し、HIV/エイズに関する最新の情報を得るよう心がけています。また当院では毎年、広島県が主催する広島県エイズ治療中核拠点病院等連絡協議会及び医療従事者等研修会に参加しておりますが、広島県東部地区の医療従事者が参加しやすいように、令和2年度より隔年ごとに、当院が主催となって、福山医療センターにて開催される運びとなりました。当診療科が中心となって、広島県東部地区の周辺医療機関にHIV診療に関する情報を提供していきます。

 

具体的な診療内容


HIV感染症は治療方法が確立され、生活習慣病と同じようにコントロールできる慢性疾患となりましたが、現在のところ根治療法はなく、感染者/患者は生涯にわたる医療受療を余儀なくされています。また、その医療的側面のみならず、経済的側面、患者自身および患者を取り巻く心理社会的側面、特にセクシュアリティの問題など数多くの課題を抱えており、HIV診療はチーム医療が求められる疾患の原点とも言えます。当院では2009年に医師、看護師、薬剤師、臨床心理士(カウンセラー)、ソーシャルワーカー(MSW)、臨床検査技師や事務職員から構成される『HIV診療チーム』を立ち上げ、これらスタッフ間で連絡を取り合うとともに、毎月1回チームカンファレンスを開催しています。カンファレンスでは自分の関わりのなかから意見を出し合い、情報を交換しながら患者さんの抱える課題や問題点を明らかにして、患者さんが長期にわたり安心して医療享受できるよう活動しています。HIV診療におけるチーム医療の目的は、患者自身が服薬も含め自己管理を行い、自身の健康を向上・維持できるようになることです。
当院では2003年以降受診患者数が漸増し、2008年からは新規受診患者数は毎年4~7名となり、2023年3月末までに受診したHIV/AIDS累積診療件数は98件、2023年3月末時点での通院患者数は70名であり、中国四国地方ブロックにおけるエイズ治療拠点病院ではトップ5に入る診療施設となっています。また周産期センターの産科医師、小児科医師と連携を行い、HIV陽性妊婦の出産例も対応した経験があります。こういった当院の診療実績と診療体制が評価され、2019年9月25日付けで、福山医療センターは全国で60施設目となるエイズ中核拠点病院(以下、中核拠点病院)に選定されました。現在、中国四国地方ブロックでは中核拠点病院が12施設あり、その多くが大学病院クラスの大きな病院です。広島県内ではエイズ拠点病院が5施設ありますが、2006年より中核拠点病院として機能している広島市立広島市民病院と県立広島病院についで3番目の中核拠点病院となります。広島県西部、広島市周辺地域ではエイズ拠点病院が4施設あり、ブロック拠点病院である広島大学病院を中心に、互いに連携を取り合い、人口密集地域である県西部のエイズ診療に対応しています。広島県東部地区における拠点病院は福山医療センターのみであり、当院が広島県内さらには中国四国地方のエイズ診療において果たす役割は大きいと考えます。当院のエイズ診療チームの構成メンバーは、日本エイズ学会指導医1名、内科医師1名、専任の看護師3名(うちエイズ学会認定看護師1名、感染管理認定看護師1名)、薬剤師4名、臨床心理士1名、社会福祉士1名、歯科衛生士1名、臨床検査技師2名で、各職種の専門スタッフがエイズ診療に携わっております。
 2021年より日本エイズ予防財団の事業として新たにスタートした「訪問看護・介護職員向けHIV感染者・エイズ患者の医療に係る実地研修」の実習生をこれまでに2回 計3名の受け入れを行いました。福山医療センターではこれからも引続き、地域に根差した医療機関として、また東部地区のエイズ中核拠点病院として、多くのHIV患者さんを受け入れ、患者さんが安心して地域の医療機関を受診できる体制の構築を目指していきます。

 

スタッフ


感染症内科医師 齊藤 誠司

感染症内科医師 福井 洋介